1.米国製造業で最大の雇用を生んでいる外国企業は、米国内で400万台ものクルマを造っている日本だ。TPPについても、「米国の産業への攻撃だ」と反対し、その理由のひとつとして「日本と中国が不正なことをやって稼いでいる」と言っている。これまた冗談ではない。中国はTPPには入っていない。
2.トランプの頭の中には、事実をチェックする機能が欠けている。移民排斥と言いながら、自分の初婚と現在の相手は東欧からの移民だ。自分の会社でも移民を雇っているし、建設工事ではポーランド不法移民も使ったと暴かれた。そもそも米国は日本と違って移民の国だ。日本と中国は同じと思っている。話している内容もアイアコッカが30年前に語っていた事と同じだ。
3.不法移民1100万人をすべて強制送還すると主張しているが、そうなった場合、賃金の高い米国人がメキシコ人に代わって仕事をするので、人件費はアップする。それが食品などの価格上昇につながり、米国人の家計は圧迫を受ける。国内総生産(GDP)も6%縮小する。
4.中国やメキシコの工場からの製品に高い割合の関税をかけると主張している。米国内で生産させることで雇用を国内に戻そうと考えている。多数の米国企業は中国やメキシコに生産拠点があるので、それらの収益も圧迫され、つまり天に向かってつばを吐くことになる。
5.こういう影響をまったく理解せず、古い常識に凝り固まった米国人の感情的な部分を刺激して票を獲得している。民主党はヒラリーが順調に勝ち進んでいるが、サンダースも健闘している。「雇用を守る」という言い分でトランプ支持もいる。共和党ではトランプ嫌いで、ヒラリーに投票しようとしているねじれが起きている。