明治から昭和にかけて日本に滞在した文化人では、松江に住んだ小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーン(1850~1904)が有名である。日清戦争後、ポルトガルの総領事として神戸に赴任したモラエス(1854~1929)は、伴侶となった女性の死後、職を辞して彼女の故郷である徳島に移り住んだ。そこでの生活は優雅なものではなく、変人と見られて、西洋乞食とかスパイなどとさげすまれていた。それでも、彼はその著作の中で、「ポルトガルの田舎町で暮らす日本人よりはまだましかもしれない」と書いている。著作は全部ポルトガル語で書かれていたので、長い間、うずもれたままであった。モラエス全集が集英社から出たのが昭和40年頃だった。モラエス研究家の花野富蔵氏らの努力の結果である。