ある女子大教授の つぶやき

日常の生活で気がついたことを随想風に綴ってみたいと思います。
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論文捏造
 

史上最大の論文捏造
    電子顕微鏡でしか見ることのできないウイルスを、まだ電子顕微鏡のなかった時代に見たと論文にしていた野口英世博士の記事を、第一回野口英世アフリカ賞に関連して記事にした。野口博士がはたして論文の捏造があったのかどうかは分からないが、医学や生物学などのバイオ関連の分野では、論文捏造が圧倒的に多いことが知られている。米国では研究公正局という公の機関まで存在している。

 

    物理や化学の分野では、比較的に再現実験がしやすいので、データをごまかすのが難しく、こうした不正行為は少ないが、1998年から2002年にかけて高温超電導の分野で史上最大規模の論文捏造が行われた。NYマンハッタン島から西へ車で1時間ほど行ったベル研究所が舞台で、1人のドイツ人研究者によって事件が起こされた。ベル研はAT&Tの研究所であったが、今では経営者が変わっている。20世紀最大の発明の一つである半導体はここで生み出された。今でも玄関にはその実物が展示されているものと思う。

    超電導は極低温で、ある種の物質の電気抵抗がなくなる現象で、1911年にオンネスによって水銀がマイナス269度でこの現象を引き起こすことが確かめられた。彼はこれでノーベル物理学賞を受けている。1986年になって、銅の酸化物がマイナス243度で超電導が生じることが確認され、高温超電導が物理学研究の最前線となった。その後、マイナス140度まで温度は上昇したが、銅系の酸化物での限界に来ていた。注目され始めたのが炭素化合物からなる有機物で、熾烈な開発競争が始まった。

 この分野で彗星の如く現れた人物がシェーン博士で、ドイツの大学で博士号を取得して、1998年にこの研究所に参加して以来、5年間で60本もの論文を書き、そのうち「サイエンス」誌に9本、「ネイチャ」誌に7本も掲載され、マイナス117度を達成した。そして彼は間違いなくノーベル物理学賞を目の前にしていたはずである。

    やがて米国、欧州、日本など関連する大学や研究所で追試が始まったが、彼が論文で書いているとおりには結果が出てこなかった。20025月になってNYタイムズが、論文捏造疑惑を報道してから、考査委員会が研究所に作られて真相が解明されていった。史上最大の論文捏造事件であったが、栄光あるベル研究所を傷つけ、彼の論文を掲載した「サイエンス」と「ネイチャ」誌の権威も落とす結果になった。
*村松 秀著「論文捏造」中公新書ラクレ

| 学問 | 18:23 | comments(1) | trackbacks(0) | ↑TOP
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バイオ、医学分野での論文捏造は確かに多いですね。
| バイオ、医学分野での論文捏造 | 2012/01/25 11:30 PM |
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