ある女子大教授の つぶやき

日常の生活で気がついたことを随想風に綴ってみたいと思います。
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藤原仲麻呂
藤原仲麻呂
  672年の壬申の乱に始まる蘇我氏、皇室、藤原氏の権力闘争は日本史の中でも稀有のものと思う。そしてこの凄まじい争いは平安時代の藤原道真の「この世をばわが世とぞ思う・・・」という歌に象徴されるように、藤原氏の覇権で終わっている。皇位継承を巡る争奪戦では、蘇我氏女系が持統天皇あたりまでは完全に制覇していたが、藤原不比等が娘を皇室に送り込む事に成功してから、徐々に藤原氏の血が入っていくことになる。
 

  

 

  この権力闘争の過程で最後の采配を振るったのが藤原仲麻呂であり、この人は日本の政治を司ってきた多くの人物の中でも、その戦略、識見、采配、実力では傑出していたのではないかと思っている。仲麻呂は不比等の4人の息子たちの長男の次男であるから、不比等の孫にあたる人物である。邪魔者や競争相手を直接には絶対に手を下さずに闇の中へと葬りさる事はお手の物で、政治権力は争うことではなくて、頭を使うことで熟柿が落ちるように手に入れる術を心得ていた。

  悪い面ばかりではなく、彼の施策は経済、文化、軍事など各方面に綿密に計画され、現実的なことを踏まえて、さらには民生の安定などにも配慮していたことが伺える。単なる人気取りの善政ではなく、中国の政治にならって、儒教的な理念を貫いたものである。これだけの理念をバックに据えた政治家は近世も含めて日本史の中ではでは珍しいと思う。残念ながら、この完全主義者にも弱点があり、完璧に構築したはずの壁に開いた小さな穴から崩れ去ってしまうこととなる。

  政治家は権力を獲得するまでは、すさまじい闘志を掻き立てるが、いざその地位を獲得すると、力尽きて腰を抜かしてしまう例が多い。私利私欲に走ることもあり、真の政策を実行に移す例は少ないし、それが確固たる政治理念に裏づけされている場合はさらに少ない。良くも悪くも藤原仲麻呂は日本史の中での政治家としては超一流と評価したい。

 参考文献:
1.井上靖「天平の甍」新潮文庫
2.杉本苑子「穢土荘厳」(上・下)文春文庫
3.永井路子「氷輪」(上・下)中公文庫

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