ある女子大教授の つぶやき

日常の生活で気がついたことを随想風に綴ってみたいと思います。
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ノーベル物理学賞 2006
ノーベル物理学賞 2006
 ここのところ物理学賞が基礎的な研究よりも応用研究での受賞に移っているので、もしかして、日本人が受賞するとの話もあったが、本年度は再び、基礎分野の研究での受賞となった。NASAの天体物理学者ジョン・マザー(John C. Mather)氏とカリフォルニア大学のジョージ・スムート(George F. Smoot)教授である。

COBE :Cosmic Background Explorer
 受賞業績は簡単に言えば、宇宙誕生に関する仮説を実証する証拠の発見である。宇宙の始まりは、G.ガモフ(1904年〜1968年)によって提唱されたビッグバン理論による。これは高温高密度状態で誕生したガスが膨張しながら現在の宇宙の姿になったとする説である。ビッグバンの後しばらくの間は電子と光子が衝突し合って光が直進できない時代をへて、温度が下がって宇宙が冷えてくると、水素原子から出る光が直進できるような状態になる。

137億年前に小さな点の大爆発で誕生後、いまだに膨張を続けている宇宙であるが、その名残りは宇宙の果てから放射されている極低温の熱として測定される。この熱を持った物体はその温度に応じた光、すなわち電波を発する。

 われわれはこの光を観測できる。これを宇宙背景放射の測定という。1964年に、背景放射は天の川銀河系外のあらゆる方向からやってくる電波として測定された。宇宙は相変わらず膨張しているため、ガモフが予言した光の波長は赤方偏移で大きく引き伸ばされ、マイクロ波となって観測されたのだ。これを1964年に発見したペンジアスとウィルソンの2人は1978年ノーベル物理学賞を受賞している。

 ビックバン後、まったく等方向にガス体が膨張を続けたとすると何も変化が起こらないで、地球のような天体が出来ない。何らかの不均等が起きるとガス体がそこで滞留して惑星などの星が誕生することになる。だからこの不均等、すなわち宇宙背景放射の「ゆらぎ」あるいは「熱分布のむら」を見つけることで、宇宙誕生が実証されることになる。この観測のために観測衛星打ち上げをNASAに提案したのがジョージ・スムート氏だ。その後スムート氏はマザー氏とともに衛星COBEの開発と観測に携わり、「背景放射のゆらぎ」を発見する観測の責任者となった。

 ある物体が輝いている、すなわち放射しているときに、波長ごとの明るさの分布が物体の温度のみに依存するものを黒体放射と呼ぶ。COBEは、宇宙背景放射が絶対零度より2.7度だけ大きい物体からの黒体放射に相当することを突き止めた。ビッグバン後からある時点における温度の黒体放射が宇宙全体に放たれ、宇宙膨張とともに冷えていった。COBEの観測結果からこのようなシナリオが説明でき、ビッグバン仮説に対する決定的な証拠となっている。

 さらに、COBEが観測した背景放射は不均等で、場所によって温度が10万分の1度単位で違っていた。「背景放射のゆらぎ」として知られるこの現象は、生まれたての宇宙がすでに不均質であった証拠である。「ゆらぎ」はのちに物質の濃淡を作り出し、そこから宇宙の大規模構造、銀河、恒星、さらに私たちの地球が作り出されたのだ。「ゆらぎ」がなければ、膨張した宇宙はどこまでも何も無い無限空間としか考えられない。

 このような天体物理に関する基礎研究は、現在、アメリカの独擅場(どくせんじょう)であり、他の国は残年ながら太刀打ち(たちうち)できない。
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