空間と時間の歪み(ゆがみ)を捉えた。
重力波観測とノーベル物理学賞
1.宇宙を一つの巨大なゴムシートに例えて、そこに重さ(質量)のある球体を落とすと、ゴムシートは球体の重さによって凹む。これがが時空の歪みであり、重力が生まれる源となる。宇宙空間は平面ではないが、時空の歪みは、こういうものが3次元的に起こっているものと理解したい。
2.このゴムシートは、質量が大きなものほど深く沈み込む。密度が高くて質量が大きいものであるほど、周囲の時空を大きく歪めるということになる。太陽は非常に質量が大きいので、それだけ多くの空間を歪めている。歪める空間が大きいほど、生みだされる重力は大きくなるので、太陽は大きな重力を持つ。
3.太陽によって歪められた空間の中で、地球などの惑星が重力に捉えられながら周囲を回っている(=公転している)。地球の周りを月が公転するなど、2重3重の複雑な重力のバランスが成り立っている。このように宇宙の面白さとスケールの大きさを感じる。そこに重力波が生み出される。
4.重力波は、このように質量のある物体が動き、空間の歪みが変化することで生みだされ、光と同じ速さで周囲に伝播して行く。これこそが、重力波が「時空面のさざなみ」のようにと表現される理由だ。この重力波は、質量とエネルギーを持つものであればどんなものでも発生させている。
5.地球上で、二人の人間が腕を組んでぐるぐる回転するだけでも時空の歪みは発生し、理論的には重力波を発生させている。しかし、この時に生じる変化は極めて小さいから、存在しないに等しいというレベルだ。重力という力は宇宙に存在する力と比べて非常に弱い。
6.人間が検知できるほど大きな重力波が生みだされるためには、中性子星やブラックホール、またはそれらの組み合わせが高速で回転するような、巨大な質量が極めて高速で運動するという状況が必要だ。観測に成功した重力波も、2つのブラックホールが回転することで生みだされた"さざなみ"だ。
7.アインシュタインは、時間や空間は歪むもので、その歪みは水面を伝わる波紋のように、波として時空を伝わっていくと予言した。100年も前の予言だが、時空を伝わる歪みの波「重力波」をついに観測して捉えた。2017年度ノーベル物理学賞は重力波を観測した米国の学者に与えられた。
8.観測したLIGOの成果は昨年だが、ことし8月には欧州で新たな重力波検出器VIRGOが動き出した。VIRGOが加わったことで、重力波がどの方向から来たかも詳しくわかるようになった。日本でも、東大宇宙線研究所が飛騨市にある神岡鉱山の跡で建設を進めるKAGRAだ。