資本主義の精神
1.資本主義の基本とは、生産活動に「資本」「技術」を投じ、「労働」者一人当たりの生産性を高めることでGDPを継続的に拡大していく社会モデルだ。生産性向上ではなく労働者(移民)の増加で生産量を増やしたところで、「生産者一人当たりの所得」は増えない。
2.移民を増やしても、需要拡大がインフレを呼び込み、生産性向上を誘引し、生産性向上が国民の所得を増やし、国民の所得増大が需要拡大をもたらすという「経済成長の黄金循環」は回らない。資本主義国である以上、人手不足は移民受入ではなく生産性向上で解消するべきだ。
3.英国は資本と技術により労働生産性を高めて成長する資本主義モデルの元祖だ。綿製品の生産性向上を目指した18世紀の産業革命こそ資本主義の始まりだ。脱ECで反移民に舵切り人手不足が深刻化し始め、それを技術投資などで乗り切る動きが出てきた。17年7−9月期の労働生産性は、対前期比で1%上昇した。
4.EU離脱を決めた16年の国民投票以降、英国を出ていく移民が急増した。投票後、1年間に12万人が荷物をまとめた。その前の1年間と比べると、3万人も出国者が増えた。EU市民の中で、英国に移り住む純移民の数は激減した。「A8」と呼ばれる東欧8カ国の市民に限定すると、減少の割合は80%になる。
5.エコノミスト誌『労働力の減少は、英国に良い効果をもたらすとの主張もある。移民労働者が減れば、企業も地元の低熟練労働者を訓練すべく、技術投資を増やさざるを得ないだろう。そうなれば、現在低水準にある英国の労働生産性も改善すると考えられる』と記事にする。
6.日本も少子高齢化に端を発した生産性年齢人口比率低下による人手不足を技術投資(及び公共投資と設備投資)による「生産性向上」で乗り切れば、長年の実質賃金低迷という災厄から解放される。深刻化する人手不足を生産性向上で乗り切ることは経営者にとって負担だが、やるしかない。
7.英国はブレグジットを決断し、移民が流入しなくなり人手不足を生産性向上という本来の資本主義で乗り切ろうとしている。日本は英国と逆のことをしている。英国への移民流入が減ったので、日本は世界第三位の移民受入大国になる。人手不足の環境が訪れたいま、本来の資本主義の姿に戻るチャンスだ。英国を見倣え。