進歩的文化人の漫画本
1.吉野源三郎は戦後平和運動の推進者だった。岩波『世界』の編集長として平和問題談話会や憲法問題研究会を組織し憲法改正を阻止する上で決定的な役割を果たした。国と国が争うのではなく、全ての人がよい友だちであるような世の中が来るという心情は大人になれなかった日本の左翼を象徴している。
2.主人公コペル君が発見した「人間分子の関係、網目の法則」を、おじさんは「生産関係」のことだと解説し、「まだ人間らしい関係になっているとはいえない」という。資本主義では人々が他人のためにではなく、報酬のために働くからだ。貧しい豆腐屋の子が虐められる話は丸山眞男がいう階級闘争の寓話だ。
3.原著は1937年に書かれた子供向けの本で、そのマンガ版は宮崎駿監督の映画化で100万部売れたという。大人が読んでもおもしろくないのは、子供向けだからではなく、内容が科学的社会主義の絵解きだからである。進歩的文化人とは共産主義者のことで、幼稚な理屈で子供を騙すだけの本だ。