335.行動経済学
1.新古典派経済学では、人々は全ての問題について効用最大化の選択を行なうことになっている。しかし、職場に行くとき、何時に起き、何を食べ、どんな服を着て何時に家を出るか、など多くの問題があり、夫々について多くの選択岐がある。全ての選択肢について効用最大化の計算をして意思決定をしていると会社に遅刻してしまう。
2.だから我々が取る行動は、いつも同じ時間に起きて同じような朝食をとり、同じような服で同じ時間に家を出るという習慣的な行動だ。実験経済学でも、人々の行動の殆どは積極的な選択の結果ではなく、習慣によって自動的に決まることが確かめられている。人々がそれを変えて意識的に選択するのは、今までの習慣ではうまく行かない新しい事態が生じた時だけだ。
3.人々に多くの選択肢を与えて「最適のものを選べ」と言えば、却って人々を混乱させる。年金の401kプランでいろいろなメニューを提示して「各人の生涯設計に合わせて決めて下さい」と言われても、大抵の人は自分の生涯設計なんか持っていないから、会社側から示されたプランに「それでいいです」と言う事が多い。こうした例は多く実験で確かめられている。
4.2017年のノーベル経済学賞は、行動経済学の開拓者、シカゴ大学のセイラー教授が受賞した。これまで非現実的な『合理的経済人』を想定して行なわれてきた制度設計を現実的な人間の行動にもとづいて考え直すということだ。つまり経済学に心理学を融合させた分野だ。著書「実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択」日経BP社、2009年。