1.財政制度審議会で会長代理を務める池尾和人慶大教授は、増収分の使途変更によって財政健全化が遅れ、団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、社会保障サービスのカットなど、財政問題が深刻化するという。木を見て森を見ずでしかない水準だ。
2.「増税して借金返済に回す」ことを繰り返したことで、デフレが深刻化し、 税収が大幅に縮小したという経緯を全く理解していない。様々な実証データ(https://www.amazon.co.jp/dp/4594077323 )や、クルーグマンやスティグリッツ教授の議論が示す積極財政こそが財政再建をもたらすのだ。
3.選挙を前に、アベは「半分を借金返済に回す」という対策を発表した。池尾や日経はこれに反対しているが、これでは日本のデフレは永遠に終わることはない。過去20年間、日本は継続させてきた「断トツの世界最低の成長率」を将来にわたって継続させ、小国化、後進国化していく他ない。
4.これに対して、選挙対策の人気取りが明らかだが、希望の党がデフレ脱却までの増税凍結を声高に主張するに至った。具体的に実行可能なデフレ脱却に向けた細い一筋の道は、希望の党のような理性のかけらもない選挙対策ではないのだ。きめ細かな大型財政政策の数か年の継続的断行が必要なのだ。
5.消費増税分の使途変更。借金返済に充てるはずだった割合を減らし、教育などの分野を念頭に歳出を拡充させる方向だが、一方で2020年度の財政健全化目標の未達は決定的となる。税収増分に加え、15兆円規模の大型補正予算を活用する。PB黒字化目標は債務残高対GDP比の安定的な引き下げに。
6.研究開発に財政的な措置を行えば、長期的に生産性が上向く効果が見込まれる。例えば、超大型加速器『国際リニアコライダー』(ILC)はその一例だ。科学技術力の向上や人材育成に加え、地域の経済効果が見込める。新幹線等のインフラ整備も、国民の期待を上向かせるという点で有望だ。
7.消費税の今後については、少なくとも次の4つの選択肢がある。1.現状のまま(増税凍結) 2.増税(増収分で借金返済) 3.増税(増収分を教育社会保障のみに支出) 4.増税(増収分のワイズスペンディング)