見える税と見えない税
1.経済政策も消費税の増税を掲げているのは自民党だけで、他の党はすべて増税には反対である。 増税の好きな人はいないので、票稼ぎにはよい。小池の三本柱のうち、「消費税の増税凍結」と「原発ゼロ」は、見える税を減らして見えない税を増やすというポピュリズムで一貫しているだけだ。
2.消費税を凍結すると財政赤字が5兆円増え、その分は企業の「内部留保課税」6兆円でまかなうという。これは消費税という見える税を大企業負担の見えない税に代えるものだ。大企業は日本から出て行き、成長率は下がる。失業率が上がり賃金は下がり、そのコストは国民に広く薄くのしかかるだけだ。
3.「2030年までに原発ゼロ」というのは、民主党政権の「2030年代ゼロ」より極端だ。停止中原発を再稼動しないでそのまま廃止するということしか考えられない。それによって電力会社の損害は10兆円増え、電気代が3割上がり、産業は衰退する。これも消費者負担の見えない税負担と化する。
4.ベーシックインカム(BI)は一見消費者には、よく聞こえるから選挙対策だ。税負担は1990年から減っているが、社会保障支出はGDP比で倍増しており、その差額が国債の発行になった。この社会支出を年齢を問わない定額給付にし、社会保障負担を税に切り替えようというのがBIである。
5.2015年度の社会保障給付費114兆円のうち、医療費を除いた77兆円を人口で割ると、年間60万円になる。これは事業者拠出分を含む厚生年金まで廃止するものだ。所得税の控除をすべて廃止すると課税所得が倍増し、これは所得税の増税だ。つまりBIは、社会保険料という見えない税を見える税に置き換えることに他ならない。年金保険料66兆円をすべて消費税に置き換えると26%の増税になる。事業者拠出分は見えない法人税で、それを消費税に置き換えることだ。
6.年金は全部ゼロとなるから、高齢者の激しい反発を招く。彼らはその代わりBIをもらえるが、その額は厚生年金の半額程度だ。産業が衰退し失業が増える。今はBIといわれても何のことかわからないから反応がない。そのうち中身が分かったら、高齢者には「希望の党は絶望の党」としか思われない。