芸術祭十月大歌舞伎
1.世界三大叙事詩の一つ「マハーバーラタ」が歌舞伎座に新作歌舞伎として登場。『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』と題されたこの作品の主演は尾上菊之助。演出は宮城聰、脚本はテレビドラマや舞台などで活躍する青木豪。血の繋がりのある二つの勢力が、権力争いをし、その物語は神様が密接に関わる。道徳、哲学、宗教を交えながら、絶望的な大戦に向かって行き、どうしてそれが起きたかについて語られる。物語に登場する人物は、どの人物もたいへん魅力的で、個性豊かだ。紀元前に書かれたインドの叙事詩で、現代にも通じる濃密な人間ドラマだ。
2.沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)。坪内逍遥が手掛けた作品が、大阪城が徳川家康軍によって侵攻され、落城する瞬間を描いた作品。この作品の見どころは、やはり落城する瞬間の人々の心模様。どうにもならないやるせなさや憤りなど、様々な感情が渦巻く場面は見逃せない。
3.漢人韓文手管始(かんじんかんもんてくだのはじまり)時代物だが、別名「唐人殺し」という名作狂言。1764年に大阪で実際に起こった殺人事件を元に作られた狂言。唐人使節団への献上品紛失から話が始まり、家老伝七は唐人使節団の通辞に協力をもとめ、見返りに遊女を言われ、それが伝七の遊女なので問題が起きてしまった。
4.「秋の色種(あきのいろくさ)」は長唄の一つ。タイトルの通り秋の草花の中を歩いているかのような情景が浮かんでくるのが見どころのひとつ。十月大歌舞伎を締めくくる、しっとりとした長唄の世界を存分に味わえる。